かつて我らが森見登美彦氏は、「東京」に用心していた。
なぜなら東京には鉄筋コンクリートの高層ビルがびっしりと立ち並んで植物が生える余地もなく、道行く人間の大半はむやみに高価な羽毛布団を売りつけるたがる金の亡者であり、歩くのが遅い人間は踏み潰され、オシャレでない人間はツマハジキにされ、あらゆる人間たちが腕時計をにらんでイライラしている街だと考えていたからである。
殺伐とした街。
血も涙もない街。
ひとたび立ち入れば、息を吸うことさえ困難な街。
そういうふうに考えていた。
そんな登美彦氏の「凍狂」(byうすた京介氏)に対する歪んだ印象を、「まあまあ、落ち着け」とヤンワリ修正してくれたのが、「モヤモヤさまぁ〜ず」という番組である。
敢えてトテツモナク低く設定された志から生まれるおもしろさ、東京という街の意外な側面、さまぁ〜ずの融通無碍なおもしろさ、そして大江麻理子さんのその美貌を神棚に置きっぱなしにしない活躍ぶりに衝撃をおぼえた登美彦氏は、すぐさま密林の奥へ走ってDVDを買い集めた。
登美彦氏はあんまり感動していたので、このたび角川書店の雑誌「野性時代」において森見登美彦氏特集をしますヨ!と編集者の人に言われ、「だれと対談したいですか?」と問われたとき、「大江麻理子さん」と答えた。
ちなみに、この番組は「さまぁ〜ず」の二人が主役である。しかしまた、大江麻理子さんが彼ら二人に負けず劣らず重要である、ということも、おそらく大勢の人が同意するだろう。
さまぁ〜ずの二人が楽しそうであるのと同様に、大江麻理子さんも楽しそうである。
この番組は彼ら三人がまるで家の近所を探検する子どもたちのように楽しそうであることが最大の美点である。
大江麻理子さんは美人である。
当然のことながら、「かつて本上まなみさんと会ったときのように、おのれの立場を利用して私利私欲を追求しているだけではないか。そうではないのか。反論してみろ」という意見も当然予想される。
万城目学氏であれば「ヤらしいですなあ、森見さんは」と言うであろう。
そして登美彦氏は反論しない。
他の人の迷惑にならないかぎりにおいて、登美彦氏は私利私欲を追求する男である。
私利私欲を追求するためには、おのれの立場を最大限に利用する。
「男にはヤらしくならなければならぬ時がある」
登美彦氏は言っている。
そういうわけで登美彦氏はまさかそんな場所には一生ご縁があるまいと思っていたテレビ東京というところに潜り込み、大江麻理子さんと喋ってきた。
大江麻理子さんのブログにて、対談について触れられている。
http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/adomachi/ooe/
対談の内容は「野性時代」7月号に掲載される予定であるという。
他人が信じられなくなったときや、毎日見る風景が味気なくつまらないものに見え始めたときには、「モヤモヤさまぁ〜ず」を見るべきであると、登美彦氏は主張する。