森見登美彦氏はまだペンギンをあれこれいじっていた。
この期に及んでもなおペンギンたちとギリギリのたわむれを続ける登美彦氏を大目に見る人、そしてその結果を夜更けまで待つ人、つまり小囃子氏を、世界は讃えなくてはいけない。
少なくとも登美彦氏は讃えなくてはなるまい。
ともあれ、登美彦氏はようやくペンギンに終止符を打ち、
今は澄み切った静かな時間の中にいる。
妻は足踏み健康器具の上で歯磨きをしている。
本日より、関東では活動漫画版の『四畳半神話大系』が始まる。
観た人は、まず圧倒されるであろう。
演じる人の喉から血が出たとも言われる、膨大なセリフに。
あまりの密度の濃さに泣き出す人さえあるかもしれない。
密度が濃いわりに中身のないことに怒る人もあるかもしれない。
上田誠氏いわく「膨大な情報の中に有益な情報が一つもない」。
「しかしそこで腰砕けになってはいけない!」
登美彦氏は自信をもって言う。
「勇気をもって、顎を上げて、前に進むべし。1話から2話へ、2話から3話へ。やがてすべてがつながり始め、登場人物はその変態力を遺憾なく発揮し、明石さんはあくまで毅然として、原作に似て原作にあらざる奇想天外な世界が現れるであろう」