「小説宝石」 10月号


美女と竹林 第十回「竹林へ立ち向かう四人の男」


 締切次郎の襲来、予想外のオメデタ、自己管理能力の欠如によって、森見登美彦氏の竹林伐採事業は暗礁に乗り上げていた。名誉は大文字山の斜面を転げ落ちるように失墜、森見Bamboo社設立の夢は遠のく。たび重なる竹林との悲劇的別離はついに創作意欲の減退を招いた。「このままでは何も書けない!」と、作家としてあるまじき弱音を洩らす登美彦氏の卑劣ぶりについてはひとまず措くとして、涙ながらの要請を受けた編集者一行は五月某日東京を発った。
 己が誇りの保全に汲々とする登美彦氏が編集者の助力を得て汚名返上を図る一方、編集者諸氏は彼ら自身の手で竹林を切り開き、本来の趣旨から果てしなく逸脱しつつある当連載の軌道修正を狙う。期するところは異なるものの利害の一致した彼らは、ともに洛西の竹林へ立ち向かった。
 彼らを待ちうけるものは栄光の未来か、それとも破滅の罠か―