『有頂天家族』(幻冬舎)


 毛深い子、生まれました。


 9月27日頃から書店に並ぶ模様。
 出版にともない、東京あるいは京都にてサイン会が行われるというが、詳細はまだ分からない。
 判明次第、告知する。


 毛深い狸たち、京都上空を飛行する天狗たち、天狗を足蹴にする半天狗、狸を食べてしまう人間たち、彼らがそれぞれ暴れ回る。
 登美彦氏史上、もっとも毛深く、もっとも大風呂敷を広げた大活劇。


<登場する狸・天狗・人間たち>




 下鴨矢三郎(主人公)


 下鴨家第三男。
 面白く生きるほかに何もすべきことはないようだ、と悟りを得て、いろいろなことをする。
 「私はいわゆる狸であるが、ただ一介の狸であることを潔しとせず、天狗に遠く憧れて、人間をまねるのも大好きだ。したがって我が日常は目まぐるしく、退屈しているひまがない」


 下鴨矢一郎


 下鴨家長男。
 狸界における政治的策謀に余念がない。堅物だが、正念場に弱い。
 下鴨家を盛り立てるための企みは、駄目な弟たちによってことごとく頓挫。
 「どこまで役に立たなければ気が済むんだ、あいつは!何の因果だ!なぜ俺の弟たちはこんなに役に立たないやつらばかりなんだ!」


 下鴨矢二郎


 下鴨家次男。
 とあるきっかけで狸界に望みを断ち、蛙となって井戸に引き籠もる。
 「いずれ狸のやることだ、役に立とうなんて思い上がりさ」


 下鴨矢四郎


 下鴨家四男。
 まれに見る化け下手ですぐに尻尾を出す。偽電気ブラン工場で修行中。
 「僕も一緒に行く。心胆を練りなさいと母上が言うから」


 
 

 狸四兄弟の母。
 熱く燃える母魂をお腹にぎうぎう詰め込んでいる。
 我が子たちは立派な狸だという根拠不問の信念をもつ。
 「あなたたちは皆、立派な狸だものね。お母さんには分かっているよ」


 父(下鴨総一郎)


 長年狸界の長だった立派な父。数年前、金曜倶楽部によって鍋にされて急逝。
 「これもまた、阿呆の血のしからしむるところだ」


 赤玉先生(如意ヶ嶽薬師坊)


 如意ヶ嶽一帯を縄張りとする天狗だが、鞍馬天狗との陣取り合戦に敗北し、出町商店街裏のアパートに逼塞。己を蹴落とした愛弟子、弁天への報われぬ恋に悶々とし、周囲の顰蹙を買う。天狗的才能のほとんどを失ったものの、天狗たる矜持を失わず、世の中のあらゆるものを見下して唾を吐く。
 「天空を自在に飛行する。それが天狗というものだ」


 弁天(鈴木聡美


 赤玉先生の薫陶を受け、天狗への階梯を駆け上ったあげく、美脚を一閃して恩師を蹴り落とした美女。本職を顔色なからしめる高笑いで、狸や天狗たちを圧倒する。狸鍋を食する謎の集団「金曜倶楽部」の一席を占める。
 「食べちゃいたいほど好きなのだもの」


 鞍馬天狗たち


 赤玉先生の不倶戴天の敵。長年の争いの末、赤玉先生から如意ヶ嶽を奪い取る。
 弁天にメロメロであり、一部の天狗たちは「弁天親衛隊」を組織して、弁天のショッピングに付き合う。
 「お上手!お上手!」


 海星


 下鴨家と対立する夷川家の長女。 
 かつて矢三郎と許嫁の関係にあったが、総一郎の死後、婚約は解消された。
 口が悪い。
 矢三郎には決して姿を見せず、闇から飛来する言葉の暴力が彼を悩ませる。
 「傷つけ!その傷がもとでくたばれ!」


 金閣銀閣


 下鴨家と対立する夷川家の双子。海星の兄たち。
 「洛中に金閣銀閣あり」と名高い阿呆である。
 四文字熟語を知っていると偉いと思っている。
 尻を噛まれると弱い。
 「またお尻を噛もうったってそうはいかない。これこそ長浜在住の鍛冶職人が、しぶしぶ作った鉄のパンツだ。おまえがガブリとやったところで歯が欠けるのがオチだぞ」
 「どうだいこのアイデアは!兄さんは賢いだろう!」


 夷川早雲


 下鴨家と対立する夷川家の頭領。
 下鴨総一郎の弟、すなわち矢三郎たちの叔父。
 偽電気ブラン工場の頂点に君臨し、采配を振るう。


 布袋(淀川教授)


 大学教授。たいへん喰い意地が張っている。
 また、たいへん狸を愛することでも知られる。
 そのくせ、金曜倶楽部の一席を占める。
 「我々はなんとさまざまなものを喰うのだろう、そして我々はなんとさまざまなものを愛するのだろう、人間万歳!という気持ちになるんだな」


 寿老人


 金曜倶楽部の重鎮。 
 謎の高利貸し。
 「狸だけは置いていけ」


 金曜倶楽部


 寿老人、淀川教授、弁天、その他四名から成る、人間たちの集い。
 忘年会では狸鍋を喰う。


 岩屋山金光坊


 かつて岩屋山を縄張りとしていた天狗。
 現在は二代目に天狗稼業を譲り、自分は大阪で趣味の中古カメラ屋を営む。