登美彦氏、東京より帰還


 森見登美彦氏は昨日夕方より東京へ出かけていた。
 そうして幻冬舎の方々とお酒を飲みながら『有頂天家族』の重厚な装幀を眺めて有頂天となり、ホテルに泊まって精神統一のためにレゴを作り、角川書店の人たちと打ち合わせをし、NHKへ出かけてテレビに出た。本上まなみさんはやはり親切であり、山本太郎氏も親切であり、NHKの人たちも親切であり、集まってくれた編集者の人々も親切であり、見学に来てくれた人たちも親切であった。親切な人たちに囲まれて、登美彦氏はしどろもどろであった。
 山本太郎氏の御母堂が登美彦氏の作品を読んでいると聞いて、登美彦氏はたいへん嬉しく思った。
 なぜか「御母堂」の読者を獲得する登美彦氏である。
 「ありがたいことである」と登美彦氏は言っている。


 登美彦氏は下のように語る。 
 「言い訳をしてはいけないけれども、やはり大勢の人の前で喋るというのは、たいへん難しい。ともすれば頭が真っ白になってしまうし、口に出していることが矛盾したり間違っているような気がしても、進行している会話の中ではなかなか訂正できない。いろいろ言いたいことがあっても、一度に喋ることができるのは一つである。真面目なことを言おうとすると失敗する。静かに推敲しながらゆっくり考えていく登美彦氏のようなノンビリ屋には、喋って伝えるのはたいへん困難な任務である。しかも長い間喋っていると、だんだん疲れて頭が働かなくなっていく。これは実際にテレビに出て喋ってみて、初めて分かることである。私はテレビでちゃんと喋っている人を『すごい』と思うのだ。したがって本上さんも山本さんもすごい。だから今日観覧席にいた人や、放送される番組を観る人は、その点を大目に見て頂きたい。・・・しかし、本上まなみさんとまたお会いできたのは、喜び以外の何ものでもなかった。握手できたのも幸いであった。出かけた甲斐があったというものだ。というか、もう、それだけでいいや」


 放送は十月六日の土曜日夜となるらしい。
 そういうわけで、観る人は広い心で観られるがよい。