「ダ・ヴィンチ」9月号


 登美彦氏の特集が行われている。
 登美彦氏の書きつづってきた恥ずかしい台詞がいろいろ並んでいる。
 登美彦氏が毛深い第五男、すなわち『有頂天家族』について語っている。
 登美彦氏のまったく信用できない年譜が掲載されている。
 登美彦氏によるあまり観光には役に立たない京都MAPが掲載されている。
 登美彦氏と瀧波ユカリ氏の対談が掲載されている。
 『夜は短し歩けよ乙女』の主人公が、全裸の江古田ちゃんから非・おともだちパンチを喰らっている。もう、すべてを受け容れるしかない。
 「この際ハッキリ言ってしまうが、瀧波ユカリ氏は美人であった」と登美彦氏は語っている。「『臨死!!江古田ちゃん』はたいへん中身の濃いマンガなので、猫も杓子も読むがよかろう」


 臨死!! 江古田ちゃん(1) (アフタヌーンKC)


 臨死!!江古田ちゃん(2) (アフタヌーンKC)


 なお、特集を眺めながら、登美彦氏は特集の趣旨に真っ向から反することを呟く。
 「まあ、男汁もたくさん書いたが、勘違いしてはいけない。私は男汁ばかりを愛するわけではない。なけなしの能力の発揮しどころが、今までそこにしかなかっただけなのである。男汁世界から離脱できるものなら、私は決して後ろを振り返らずに抜け駆けするであろう、世の多くの男汁男子と同じく。サヨナラ男汁世界。サヨナラだけが人生だ。抜け駆け上等、ご意見無用」
 「登美彦氏は俺の味方である」と考えた男性は騙されている。
 油断するな。
 甘くみるな、登美彦氏を。
 なにしろ読み切れぬファンレターが届く登美彦氏ではないか。
 「私の子どもたちは誰かの味方であったかもしれない」
 登美彦氏は言っている。
 「だが私自身は、誰の味方であったこともない。倒れる偶像に押しつぶされぬがよい!」