登美彦氏、脂肪を燃やし尽くす

 
 森見登美彦氏は独自に開発した「Tomy's bootcamp」を駆使して、脂肪を燃やし尽くすことに成功したので、体脂肪率が10%になったという。誰ひとり話題にしない「Tomy's bootcamp」とは如何なるものか、名前がよく似ており誰もが話題にする「Billy's bootcamp」とはどこが違うのか。
 登美彦氏によると「Tomy's boot camp」の手順は以下の通りであるという。


 ・自分の能力の見積もりを誤る。
 ・上記の手順をふまえた上で、仕事を引き受ける。
 ・締め切りに間に合わないかもしれない。
 ・頑張る。
 ・才能がないと自分を責める。
 ・締め切りに間に合わないかもしれない。
 ・机に向かい、珈琲を飲みながら煙草を吸う。
 ・ご飯を食べるのが面倒になる。
 ・ハッと気づくと一日が過ぎている。


 以上である。
 この方法の良いところは、Billy's bootcampのような「そら痩せるわ」というような過酷な運動をしなくても、机の前に座っているだけでよいことである。
 Tomy's bootcampの効果は絶大であり、登美彦氏は身体のあちこちに無用のくびれがいろいろできた。現在の登美彦氏は絞りに絞られた肉体美を所有している。脂肪もないが筋肉もない。キーボードを叩く筋肉しかない。あんまり肉がないので、肩も凝らない(科学的に正しい理屈かどうか不明であるが、登美彦氏は肩凝りの苦しみというものをほとんどまったく経験したことがないという)。
 だがこれでは、親類のおばさんから同僚の御母堂、編集者の方々まで心配するので、ほどほどにしなくてはいけない。
 ビタミンは大事である。
 そしてあんまり脂肪がないと、氷河期がきたらおだぶつである。
 地球温暖化などと言ってすましている場合ではない。


 そういうわけで登美彦氏は、法科大学院を見事に卒業して「法務博士」の肩書きを手に入れた今、当面なにもすることがなくなってしまった半ニート状態にある戦友と美味しい晩ご飯を食べた。そして元気になった。