第五男、毛深い子。


 森見登美彦氏はようやく第五男、毛深い子を東京へ送り出した。
 まだ名前がついていないので、「毛深い子」と呼ばれているのは哀れであるが、毛深いのだから仕方がない。
 自分でまいた種とはいえ、なにしろ毛深い子であるから、毛がこんぐらがってほどけず、登美彦氏はたいへん苦労をした。


 登美彦氏は六盛の鱧のお弁当をもって晩餐とし、お酒を飲んでお祝いした。
 「しかしここから先がまた長い!」
 登美彦氏は溜息をついた。
 「しかもほかにまだまだ用事がある」
 喜びに浸っているひまがない。