映画「ペンギン・ハイウェイ」の新しい予告ができた。
 主題歌は宇多田ヒカルさん。いくらボンヤリ生きているとはいえ、森見登美彦氏も宇多田ヒカルさんの名前は知っている。まさか自分の作品と宇多田ヒカルさんがつながりを持つとは、一〇年前には考えもしなかった。不思議なことである。
 映画は八月十七日公開なのでヨロシクお願いします。
 かつて富山のPAワークスへ遊びに出かけたとき、ちょうど完成したアニメ「有頂天家族」の第八話を見る羽目になった。登美彦氏は原作者であるにもかかわらず号泣、その後にひかえていた吉原監督との対談にも支障が出たのである。そういうのはまことに原作者の沽券にかかわる。そして映画「ペンギン・ハイウェイ」でも同様の現象が登美彦氏をもみくちゃにするであろうことは想像に難くない。それゆえに登美彦氏は試写会へ行くことを渋りに渋っている。


 「有頂天家族」といえば、今週末は下鴨神社でイベントが行われる。登美彦氏もフラリと現れる予定で、妙な緊張感が漂うことになるのも気まずいので前もって白状しておくが、まだ第三部の原稿は登美彦氏の胸の内にだけ存在している。まことに申し訳ないと思いつつ、「どうしようもないのだ」と言わざるを得ない。なぜなら登美彦氏は他にもいろいろなものを書く約束があり、しかもそれらをバンバン片付けていけるような小説家的膂力がないからである。
 もどかしいもどかしい。ひとやすみひとやすみ。


 また、月刊「モーニング」モーニング・ツー」において来月から『太陽の塔』のマンガ連載が始まる。十五年越し「まさか」のマンガ化、2003年の出版当時腐れ大学生だったという担当編集者執念の結実である。作者のかしのこおりさんは、寒々しい四畳半にムニムニと奇怪な妄想が入りこんでくる感触を、マンガならではというべき面白さで描きだしている。登美彦氏も連載をたいへん楽しみにしている。
 月刊「モーニング」モーニング・ツー」をヨロシクお願いします。
 (追記:雑誌名を間違っておりました)


 


 映画化やイベントやマンガ化はありがたいことである。
 それがたいへん幸福なことであることは登美彦氏も分かっている。しかし結局のところ、それは過去の登美彦氏の遺産というべきであり、もはや過ぎたことなのである。現在の登美彦氏は何ひとつ威張れない。小説家は新作を書かなければしょうがない。
 というわけで、登美彦氏は早く次作『熱帯』の世界から脱出したいと願っているのだが、なかなか出口が見えないのだ。
 『熱帯』は「『熱帯』という小説についての小説」である。同じような構造を持つ作品としてミヒャエル・エンデの『はてしない物語』が思い浮かぶ。登美彦氏は油断していた。まさか本当に「はてしない」(=書き終わらない)物語になってしまうとは……。そもそもこういう呪われた手法に手を出すべきではなかったのではないか。しかしここまで沖に船出して、今さら引き返すわけにもいかない。もはや陸地は見えない。行きつくところまで行くしかないのである。